書評 凡才の集団は孤高の天才に勝る-Group Genius-
誰もが認める、ものすごく素晴らしいアイデアを生み出すこと。
多くの人が、これは限られた一部の人――天才と呼ばれる――の特権だと考えてはいないだろうか。
アイデアを出そうとして失敗するたびにいつも、
「私は普通の人、凡人だから、そんなこと考えつけるわけがない」
と思ってはいないだろうか。
本書は、そんなアイデアについての「勘違い」「思い込み」を打破してくれる、至高の一冊だ。
すごく気に入った本なので、備忘録 兼 おすすめ の意味でブログ書きます。
結論
アイデア、発想は一人の天才の特権ではない。グループのコラボレーションにより産まれたのだ。
「文明は偉大な天才たちが発明した」と、装飾された神話が信じられているがそれは間違いだ。トーマス・エジソン、ライト兄弟、アインシュタイン、印象派の画家達、これらの歴史がそれ証明している。(詳細は本読んでね)
僕たちはこの神話を乗り越え、本物の創造性を手に入れなければならない。
「モネの積みわら」となんでアイデアを手に入れるのにコラボレーションが大事なのか
北九州市立美術館で「モネとジヴェルニーの画家たち」を観に行った。ジヴェルニー村には一時期100人以上も画家が住み、互いに交流し、試行錯誤し、モネを中心として印象派を生み出したらしい。これこそまさにコラボレーションが生み出した傑作ではないだろうか?
孤独な状態で考え出したとしても、元をたどれば過去に経験したコラボレーションに由来するもの。個々人の閃きが次の閃きに火をつけ、一つの素晴らしいアイデアを生み出す。モネの積み藁もそうして産まれたのではないだろうか。
コラボレーションの特徴
コラボレーションすればすぐ優れたアイデアが出てくるわけではない。個々人がアイデアを出す下地を作っておかねばならない。ジェームズ・w・ヤング著「アイデアのつくり方」によれば、アイデアを生み出すには流れがある。貯蔵→無意識→閃き(注意:鹿解釈)だ。そのため、アイデアを出すのには時間がかかる。下調べを繰り返し、会話を積み重ねていく。そして優れたアイデアが閃くのだ。アイデアは時間がかかるものなのだ。
聞く耳を持つ
会話の際にとても大事なのが聞く耳を持つことだ。著書の中では「ディープリスニング」と呼び、特別扱いしている。アイデアが積み重なっていくものならば、人が発したアイデアを受け入れなければいけない。しゃべってばかりじゃだめなのだ。
また、主張ばかりする人、人の話を遮る人は聞いてて飽きるし、集団が白けてしまう。あと、ディープリスニングはインストラクター時代に意識していた。講師はしゃべるのが仕事じゃない。生徒が知りたいことは生徒が知っている。生徒に耳を傾けるのが大事なのだ。
コラボレーションは不効率で創造的
コラボレーションは不効率である。ぶっちゃげ個人でやったほうが早い。だが、一人では創造できないほど創造的である。問題を解くのではなく、問題の本質を捉える問題発見型に向いている。
即興のコラボレーションが産むイノベーション
イノベーションは台本通りにはいかない。コントロールできない。予想できない。現場から意表をついて即興的に生まれてくる。では、どうすればイノベーションを起こすことができるんだ?
青島ではないけど「イノベーションは会議室で起こってるんじゃない現場で起こってんだ」「現場重視」で計画に時間をかけないこと。実施段階に時間をかける企業がイノベーションを起こしているそうだ。イノベーションを望むのなら、即興性を極限まで高めた組織を作るのが大事。
フロー
フローに関してはダニエル・ピンク著「モチベーション3.0」と重複する内容が多かった。コラボレーションでもフローが大事とのことだ。
- 自分の技量に見合った挑戦的な仕事
- 目標が明確
- 目標到達率が得られること
- その仕事に完全に投入できる環境
- 他社との会話がかわされる場
グループ・フロー
グループフローはコラボレーションするグループがフロー状態に入るための技。これはモチベーション3.0には書いてなかったので要チェック。
- 不明確な目標は最大の障害
- 他の意見に注意深く耳を傾ける
- 自分たちの思い通りに出来る環境。自分がすべてを管理しているという感覚と身をまかせる心構え。
- すべての参加者が同等の役割
- 相手の意見に耳を傾け、グループの自主性を重んじ、その場の意思決定に従う
- 適度な親密さ。親しすぎてはいけない。グループ目標の共通理解。
- 不断のコミュニケーション。自由気ままな会話
ブレーンストーミング
ブレーンストーミングってちゃんとやれてる組織って少ないですよね。鹿が次の組織に入ったら率先してブレストやってみたいなぁ。というわけで箇条書きにしておきます。
- 批判的な意見は創造性の敵
- 自由奔放
- 質より量
- アイデアの結合
IDEOのオリジナル
- ひとつの主題に焦点を絞る
- 別の話題に写らないこと
- 視覚化すること
- 具体的、物理的に示すこと
- スペースを利用すること(ホワイトボード、ポスト・イット)
- チーム外からのアイデア
- 訓練を積んだ進行役が必須
- ルール厳守
- 全ての発言をホワイトボードに書き出す
- 気に入ったアイデアに投票する
- 出席メンバーは同等の立場
- 権威筋は出席してはならない
- ブレーンストーミングが業務の一環となるよう定期的に行う
デメリット
ブレーンストーミングは実はそんなに効果が高いわけではないらしい。同じ人数が独力で考えたほうが効率がよかったりするが、上記を踏まえた洗礼されたブレーンストーミングは優れたイノベーションを出すことができるそうだ。
ブレストの気をつけること
- グループでの話題の固定化
- 社会的抑制(遠慮)
- 社会的怠惰(無責任)
コラボレーティブなグループを作るには
- グループを対象とした報奨制度
- 補完的な技能をもった人材
- 自主管理を行うチーム
- リーダーもチームの一員となる。
- グループの交流を楽しむ
環境
- 天才的な創造性を生み出すような構成になるよう注意する
- 10の内9失敗しても肥やしにできる組織
- 勤務時間の10〜20%を創造的挑戦に投資する
創造力 = 懸命の努力 x コラボレーション x 特定分野の深い理解
などなど
書いてたらバッテリーがなくなってきたのでここらへんで。これで紹介できたのは半分くらいです。ぜひ買って読んでペンで線ひいてノートにまとめてね!
Nulabの@hsmt社長が持ってたこの本には、付箋がいっぱい貼ってありました。むしろ付箋でした。